2020/04/16 パンデミック雑感7 リスク・コミュニケーションのこと

本日付の毎日新聞に韓国の疾病管理本部の感染症対策における「リスク・コミュニケーション」部門の動きについて詳しく伝えられていた。 韓国の感染症対策に見るリスクコミュニケーション | オアシスのとんぼ | 澤田克己 | 毎日新聞「政治プレミア」 韓国の新…

中原中也論ー卒論の思い出

卒業論文に中原中也論を書いた。と書くと、近代文学が専攻だったのかと思われるかもしれないが、私が専攻していたのは、比較文化学類現代文化コースという、なにをやっているのかわからないコースで、実際、同じコースの中に英文学、仏文学、文化地理学、人…

2020/04/14

誰もがそうであるように、このコロナウィルスの影響で、あらかたの行事が飛んでしまったため、この機会に読書をすることに決め、いつにないペースでたまっている本を読み進めている。どの本も、読めば新しい発見があり、得ることがある。読書とはすばらしい…

プリーモ・レーヴィ『休戦』読了

よい本だった。こういう描写のしかたの文章を自分も書いてみたいと思わせる、人間味のあふれる穏やかな、それでいて深い悲しみのある文章。つづいて、安克昌『心の傷を癒すということ』を読み始める。これは宮地尚子さんが『みすず』の今年の5冊のなかに、…

2020/04/13 パンデミック雑感6 統治機構への信頼性(スウェーデンの場合)

なんの因果か、原発事故が起きてからずっと後処理のことを考えているのだけれど、そこでもっとも問題となることのひとつは、統治機構のありかただ。放射線量やそれの健康や生活への影響というのは、もちろんベースにあって重要ではあるのだけれど、対応その…

2020/04/13 『休戦』を読みながら

プリーモ・レーヴィの『休戦』を読みながら、日を過ごす。この本は、ずいぶん前、震災よりももっと前だから10年以上前に、図書館が蔵書整理した時のリサイクル図書として持ち帰り自由になっていたものをもらってきた。ほとんど一度も開いた形跡もないのだけ…

2020/04/11 パンデミック雑感5 経済と生命のバーター

経済活動と国民の生命がバーターになっているかのような議論をみながら、これもまた原発事故の後に起きた議論とそっくり同じだなと思いつつ、条件の違いを加味し、考えている。つまり、原発事故の場合は、よほどの高線量でない限りは放射能の健康リスクは遷…

2020/04/10 パンデミック雑感4 花冷え

noteにつらつらとなにかを書いては、下書き保存ばかりしているものだから、下書きフォルダばかりが増えていく。最初から公開するつもりなく、後から自分で読み返そうと思って書いているものも多いのだけれど、書いてみてわざわざ公開するほどのものでもない…

2020/03/31 パンデミック雑感3

欧米での感染拡大おさまらず、日本は新型インフルエンザ特措法にもとづく「非常事態宣言」を出すか出さないかやきもきしているといったところ。もっとも出したところで、欧米のようなロックダウンといった私権の制限はほとんど行うことができないような条文…

2020/03/29 パンデミック雑感2 社会の不均衡について

COVID-19の中国武漢におけるパンデミックを「中国のチェルノブイリ」と書いている記述を読んで、ああ、なるほど、と思った。英語圏の報道では、このパンデミックを地政学として捉えている論説が多く出されているようだ。そういえば、宮地尚子氏の『環状島 ー…

2020/03/23 パンデミック雑感

新型コロナウィルスの政府のうちだす対策について、政府が明確な指針や基準(そしてそれによる影響に対する政策的フォロー)を打ち出さないことによる混乱が指摘されはじめている。これは新型コロナウィルス対策だけではなく、自民党政権以降の福島の原発事…

2020/03/20 構造が見えること

宮地尚子『環状島=トラウマの地政学』を読み終えて、Twitterに簡単に感想とも呼べないメモを置いた。 環状島=トラウマの地政学 【新装版】www.amazon.co.jp 3,520円(2020年03月21日 00:36時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する 自分でこれを書いたあ…

宮地尚子『環状島=トラウマの地政学』

宮地尚子氏のことを知ったのは、今年の『みすず』1・2月合併号読書アンケートのなかに、私の『海を撃つ』を取り上げてくださっていたからだった。専門領域も存じ上げないで、どういった方が自分の本に関心を持ってくださったんだろうか、と思っていたときに、…

2020/03/20 いわれのない差別

お役所仕事の不思議なことのひとつは、どう考えても論理的におかしな用語をいつまでも使い続けることだ。「いわれのない差別はやめましょう」という言葉がしばしば聞かれるのだが、冒頭につけられた「いわれのない」はまったく意味をなしておらず、そもそも…

めでたさも中くらいなりおらが春。

めでたさに湧く常磐線開通の報をなんとなく居心地わるく眺めている。生活の利便という点から言えば、南相馬と水戸に親戚が住まっているわが家にとっての恩恵は大きく、素直に助かる。年寄りは、対面通行の高速道路の運転は心配を覚える年齢になっているし、…

14時46分の日常

今年は新型コロナウィルス騒動もあって、震災が話題になることが少なく、とりわけ風化を感じるという声も多く聞かれるが、こと原発事故にかんしては、私は、これはよい風化であるようにと感じている。というのは、これまで口を閉ざして語らなかった人がポツ…

帰還困難区域における防護服の着用について

しばしばSNS上でマスコミ批判として使われる帰還困難区域の立入の際に着用される防護服の映像についてだが、マスコミが意図的にその映像を撮って流しているとの誤解が広く見受けられるので、記載しておく。まず、住民以外の人間が仕事によって一時的な立入を…

2020/03/08 心穏やかな日々

朝から雨、曇天の肌寒い日だというのに、窓の外から見える庭には、ジョウビタキ、セキレイ、それからヒヨドリが入れ替わり立ち替わりやってくる。北側の窓からは梅が満開、ヒヨドリが花蜜をついばんでいる。じっと見つめていると、慌てたように飛び立って、…

2020/03/07 除染土のゆくえ

2020年3月6日付けで、環境省の大臣室などに中間貯蔵施設に運び込まれた除染土を鉢植えに入れて飾ったというニュースが報じられた。 誰の思いつきなのかわからない、大臣本人なのか、もしかすると環境省の人間のアイデアかもしれない。それがどちらであったと…

2020/03/04 君に

あなたのことを親愛の情を込めて「君」と呼ぶことをゆるしてもらえるだろうか。いや、許可をもらう必要はないのかもしれない。これは君に宛てた、けれど決して差し出すことのない手紙なのだから。君と私がどういう関係であったのかを説明するのは難しい。時…

封鎖都市の記憶

屋内退避区域、または、2011年4月21日以降には緊急時避難準備区域と呼ばれるようになった区域は、おおむね東京電力福島第一原子力発電所から半径20〜30km圏になる。日本政府は、不測の事態が発生した時に自力で避難することができる健康な成人のみそこに居住…

2020/02/29 ルビコン川

あの時も「学校」だったな。内閣参与が涙の記者会見をした日のことを思い出していた。もっとも当時我が家はテレビをつないでいなかったので、写真と文字報道によってしか知らないのだけれど、でもなぜだか涙の瞬間にたかれた大量のフラッシュの音まで記憶に…

附記

この記事を書いたあとに、安倍総理が小中学校に休校「要請」を打ち出したとのことで、脱力してしまった。先の記事には、政府対応については触れなかった。政府対応も冗談のように原発事故の後をなぞっている。ただ違うのは、当時の政権には巧拙の問題はあっ…

SNSの集団心理

新型コロナウィルスの騒ぎで、Twitterから距離を置くと書いている人が散見されるが、もっともな判断だ。原発事故後の騒動とうりふたつの騒ぎが繰り返されるのを見て、あたかも混乱時の人間の社会心理がどのように推移するかの再現実験をみているかのような感…

2020/02/27 梅に霰

確定申告の作業すべて終了。書類を提出してほっとしたところで、確定申告の提出期限を一ヶ月延長するとの速報ニュース。自分にはもう関係のないニュースだと見出しだけ読み流す。ソファに腰掛けてぼんやりと窓から外を眺めていると、いやに温かった今年の冬…

掲載誌お知らせ

朝日新聞社の『Journalism』という雑誌の2月号に、福島第一原発の「水」問題について寄稿しました。電子書籍もありますので、ご興味をお持ちの方はお読みいただけると幸いです。 リンクこういう時事問題的な原発事故関係の話題を書くときは、文章の書き方を…

マツモの酢の物

マツモという海藻がある。形状が松の葉に似ているから、その名がある。生の状態では褐色なのだが、お湯をさっとかけると鮮やかな緑色に変わり、なるほど松の緑によく似て見える。細く噛むと繊細な歯ごたえがある。少しばかりぬめりもあり、かすかな潮の香り…

Men explains things to me

冒頭のエピソードだけ読んで積ん読本になっているのだが、レベッカ・ソルニットに『説教したがる男たち』という著書がある。たまたま同席した初対面の男性が著者ソルニット(女性)に対して、最近読んだ興味深い本の解説を、まさにその本の著者本人であるソ…

「風評」をめぐる世論と報道の共犯関係

もはや聞き飽きるほど耳にしている「風評被害」の経済的側面の実態については、いくつかの信頼できる調査によって、その実態の輪郭線がおおよそ見えてきたように思う。(https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf…

小委員会傍聴

たまたま都内に出かける用事があった翌日に、経産省の汚染水の審議会が開かれることになっていたので、傍聴に寄ってみることにした。報道で繰り返し伝えられている小委員会で、今回が最終であるということで、傍聴席は満席とまではいかずともかなりが埋まっ…