帰還困難区域における防護服の着用について

しばしばSNS上でマスコミ批判として使われる帰還困難区域の立入の際に着用される防護服の映像についてだが、マスコミが意図的にその映像を撮って流しているとの誤解が広く見受けられるので、記載しておく。

まず、住民以外の人間が仕事によって一時的な立入をする場合であるが(「公益目的の立入」)、この時の防護服着用は「義務」である。立入手続きの窓口は各自治体になっているため、立ち入るすべての自治体から許可を得る必要があるが、そこには防護服の着用が義務づけられている。(大熊町の場合

住民の一時帰宅の際の着用については、任意となっている。自治体によっては、防護服着用は「推奨」とされていることもあるが、着用する人もいれば、しない人もいる。そこは本人の意志だ。住民の一時帰宅の報道が流れる際に、着用している場合もしていない場合もあるのは、このせいだ。

2020年3月10日追記:報道が立入禁止区域に入域するためには、「公益立入」の申請をする場合と、避難区域の住民に依頼して帯同させてもらうという二通りのパターンがある。従って、報道が必ず防護服を着用するというわけでもなく、これも立入申請のやり方によって着用する場合もあれば、しない場合もある。原子力損害賠償審査会が視察を行った際に防護服を着用していたのは、公益立入で入ったためだろう。
また、中間貯蔵施設等の常時作業に入る作業員が防護服を着用していないのは、事業者が労働者の被曝量を管理するという条件付きで、防護服着用を免除するという措置が途中から取られるようになったためであったと記憶している。資料はどこかにはあると思うので、ご興味をお持ちの方は探していただきたい。(面倒くさくなったため。申し訳ない。)

私がNHKの番組で立入させてもらったシーンの時は、案内してくれた双葉町の方の一時帰宅に帯同させてもらうという形だったため、防護服着用は任意だった。ただ、スクリーニング場でもらうことはできるので、双葉町の案内の方に従って、足下だけ着用をした。

一方、職務として入る場合は、防護服着用は義務であるため、着用しない映像が流れることはない。

なぜこうしたことが起きるかと言うと、住民の一時帰宅に関しては、被災者の生活支援という形になり、所掌が内閣府原子力被災者生活支援チーム、一方の公益立入については労働者の健康管理となり、所掌が厚労省となるためだ。馬鹿馬鹿しいと思われるかもしれないが、日本のお役所の縦割りというのはこうしたもので、当のご本人たちもなにがなんだかわからなくなっていることも珍しくはない。(この記事を読んで、なるほどと得心するお役所の方は少なくないと思う。)

これをマスコミの意図的報道であると言われるのは、さすがにマスコミが気の毒である。