2017-01-01から1年間の記事一覧

語り得ぬもの、語りうる他者

少しゆっくりめの朝、ホテルの隣のファミリーレストランでの朝食は、滞在5日めにもなると、すっかり飽きてしまって、メニューを見るのさえうんざりであったのだけれど、ため息をつくように比較的食べやすいホットマフィンとハッシュドポテトのセットを頼む。…

語り得ぬもの、語り得る他者

少しゆっくりめの朝、ホテルの隣のファミリーレストランでの朝食は、滞在5日めにもなると、すっかり飽きてしまって、メニューを見るのさえうんざりであったのだけれど、ため息をつくように比較的食べやすいホットマフィンとハッシュドポテトのセットを頼む。…

「生命の破壊」という表象

『曝された生』で詳細に掘り起こされたウクライナの事例は、それそのものでも十分に興味深く示唆に富むものであるが、著者の放射線や原子力に対する姿勢も、わたしにとっては関心を引くものであった。本文の記述中に「生命の破壊」という表現が出てくる。研…

アドリアナ・ペトリーナ『曝された生』感想

人類学者である著者が、主として1996年頃のウクライナにおけるフィールドワークを元に、チェルノブイリ事故後のウクライナの人々が、いかに自らの存在を変容させ、新たな生物学的統治メカニズムに対応して来たか(できないで来たか)を、文書資料なども豊富…

アーレントの『全体主義の起源』3巻を読み直している。 私がこの1,2年、直面してきたものの多くについて明晰に述べられていることに驚くとともに、深く安堵する。言語化することを躊躇ってきたことが多くある。予言の成就を願っているのではないか、という…

祈りに代えて

終わりのはじまりのはじまり。 そんな気配が濃厚に立ちこめる日に、どのような言葉も、口にすればたちまち力を失い、掻き消されてゆく。 祈りと聖句に代えて、書き付ける。 わたしは心が痛い、でも、この痛みは、わたしのもの。わたしは痛みからどこにも逃げ…

そのうみ、凪いで、あお

唐突に、海が見たくなり、お気に入りのケーキ屋さんで買ったケーキを車に乗せて、見晴らしのよいポイントまで出かける、なんてことを震災前にはしていた。 海は、穏やかな時もあり、少しばかり荒れている時もあった。大抵、どんな日も海辺にはサーファーがい…

過去とともに生きること

フランス人ドキュメンタリー監督のOlivier Julien が、チェルノブイリ事故から30年、福島第一原子力発電所事故から5年目を迎えた昨年、’Chernobyl-Fukushima: Living With the Legacy’ というドキュメンタリーを制作し、ドイツ・フランス合同のドキュメンタ…

忘れられない人

ほうら、忘れられなくなった。 だから、止めておけばよかったのよ。ちがう、止められるようにしたかった。 そう、たとえば、住める区域と住めない区域を明確に区切り、住めない区域の将来像をきちんと共有できる案配にしておけば、わたしは、とっくにこんな…