2011-01-01から1年間の記事一覧

■したいこと

したいこと、という問いを投げかけられて、ああ、これは鬼門であったな、と気付いたときには、既に時遅く、エアポケットの中に嵌り込んだかのごとく、ただ、問いだけが渦巻いていた。 したいことと、できることは、違う。 今は、できること、をするべきだ。…

■忘れないでほしい

その学校は、今はもう再開はしているのだけれど、生徒がバラバラになってしまっているのだと、聞いていた。 だから、目の前の彼女が、本当はそこの在籍学生なのだ、と聞いたときに、なるほど、と合点がいった。 なぜなら、彼女が警戒区域の人だと、私は知っ…

■さざ波

いつもの犬のおばさんが、いつもの野良仕事の格好で、いつもの背負子を背負って、うちの前を通っていく。 (7年ここに住んでいるが、未だに名前を知らない。雰囲気が、犬に似ているので、「犬のおばさん」と勝手に呼んでいる。) 唐突に顔を上げて、「いや、…

■Lord,have mercy ,what do you gonna do about the people who are prayin' to you?

11月11日に発表になった20km圏内を含んだ、空間線量率マップ。 事故以降、これまでも何度か同じマップは公開されていたはずなのだが、今回、この地図の意味するところを、はじめて理解したような気がして、言葉を失った。 毀損された、欠損した、欠落した、…

■無題

point of no return あるいは、 決定的に損なわれた何か。 言明する事に、どれほどの意味が、と思いつつ、 私の中の何かが、決定的に失われたのだと、自覚した。 現在の精神状態を平常だとは思わない方が良い。 おそらく、どこかで平衡感覚を欠いている。 ど…

■稜線

山頂と呼ぶには平らかで、高原と呼ぶには天に近い。 畳なづく 八重垣 青垣 視界のいちばん深いところ、向こう側に太平洋がある。 上空を海からの風が吹き抜ける。 天に触れることができるその場所に、微かな潮の香りが漂うこともあったかもしれない。 雨と霧…

■点描

縁側のない部屋、南側に大きく開いたサッシからは、明るい光が差し込む。 角度を低くした陽差しは光うすく目に眩しい。その一条一条が、庭の樹木の葉にあたり、しろい光が散乱する。 家主不在の間、雑草が生い茂り、荒れていた庭も、今はすっかり元のように…

■ 向こう側

「荒涼とした光景」、こういう描写をするべきなのかどうか、わからない。 夏に来た時とまったく変わらない。 いや、あの時青々と生い茂っていた草は、色を失いつつあり、それがいっそう、荒涼とした感を際だたせている。 ただひとつ、違うのは、急いで作られ…

■農圃

目線をやや上に向け、視界の焦点距離を遠くすると、向こうに松林が見える。 一年前までは、見えた。 今は、あてどのない、空とも海ともつかぬ、ただ、広い、〈向こう側〉が見える。 〈向こう側〉の手前には、赤色灯を点した検問があり、警備員が佇んでいる。…

勉強会のDVD配布について

9/24 に行いました 放射線勉強会のDVD配布の準備が整いました。 →ブログの勉強会関連記事 また、勉強会の概要につきましては、以下のまとめをご一読下さいましたら、幸いです。 →『放射線勉強会を終えて〜報告編』 http://togetter.com/li/192477 → 『放射線…

■磐城太田駅

その駅は、元から、無人駅であった。 だから、今なお、無人である。 そう思って立ち寄った小さな駅舎の前には、軽トラックが一台停まっている。 訝しく思いながら、咎め立てする人もいないホームへ足を踏み入れる。 久しく車輪を載せていないレールは赤錆を…

■20km地点

集落を分断するバリケードの内と外で、世界は構成される。 そこに暮らす人は、かように述べなければならない。 トナリ ハ タチイリ キンシ クイキ デス 同じゲートは、海沿いの道にもしつらえられ、あるいは、山へ向かう道へ、たんぼ道の途中に、ありとある…

日記に名前を

今、何が起きているのか、自分自身が何を感じているのか、可能な限り、可視化してみたいと思った。 それが目に見えないから怖ろしいと言い、将来どうなるかわからないから恐いのだ、と言う。 違う。 問題は物質そのものではなく、未来でもない。 人が何かを…

過日、広野にて

情報は降り積もり、 しずかにしずかに浸透してゆく。 地の一粒に沁み、 細胞の一片に染み入るように、 奥深いところまで。 それは望ましいものではなく、 喜ばしいものでもなく、 奥底に眠っている、眠らせておくべきである、 私たちの秘められた、あるいは…

4:今後の展開について

今回、勉強会の前に、一般参加者を交えて、コンクリートブロックを用いた放射線の遮蔽実験を行いました。 これが、非常に、有意義、かつ楽しいものでした。 少し距離を置いて、冷ややかな目で眺めてみると、放射性物質が飛散した現実の暮らしの場で、放射線…

3:科学知識での不安解消に関する限界

勉強会での具体例 具体的に書いてみます。 勉強会の中での講師の先生の説明で、原発からの放射性ヨウ素の飛散が、南方向(いわき市方面)でも高い比率を示していることがわかった、と言う解説がありました。 会場がざわついて、質問が出ました。 「いわき市…

2:方法として今後も使えそうな部分

今回の勉強会スタイルでは、科学知識のやり取りの手法としては、有効な部分がいくつかあったと思います。 勉強会の方式としては、「対話スタイル」を目指しました。 ただ、「対話」と言っても、集まった人間が三々五々に質問したのでは、人数が4〜5人なら対…

1:ざっくりとした全体の印象など

今回の勉強会を終えて、主催者としての印象をまず述べると、次のようなものです。 方法論としては一定の効果が期待できる(手応え・発展性ともにあり)、 しかし、現在のいちばん大きな課題である地域社会の不安を解消するには、科学知識のやり取りだけでは…

5) 進行表

回収されたアンケート結果を受けて、1)企画案の中にある「流れ」をより詳細にして、当日の「進行表」を作成しました。 現実には、この進行表の流れ通りの展開にはなりませんでしたが(その理由については後で考察します)、おそらく出てくるであろう質問につ…

4)アンケート結果

このアンケート結果は、参加しない方の回答が多く含まれますが、地域の全体の雰囲気が把握できました。 当日、参加者には配布して、これに基づいて、全体を進行していきました。 集計部分は、ここでも、@okami_sakanaya さんにたくさん手伝って頂きました。 …

3)アンケート 

アンケートは、「入口」「出口」をどのような形にするかを意識して設問を考えています。 アンケートの設問を決める段階で、勉強会の進行(流れ)をどのようにするのか、ある程度明確にしながらの作業になります。 また、企画案の現状把握によって、参加者が…

1)企画案

企画案は、内輪向けの資料なので、一般公開は前提としていません。 @okami_sakanaya さんからのアドバイスで 勉強会の「入口」 と 「出口」 を明確にする事を重視しています。 全体の流れは、「入口」→「出口」をどのように作るかを考えると、自然にできてく…

最初に

9/24に行われた放射線勉強会の資料を順次アップしていきます。 企画段階で意図したものと、実際は異なる部分が少なからずありますが、それについては、最後にコメントすることにします。 とりあえずは、企画段階の資料を、そのままアップします。 ※ただし、…

今日で、半年

半年めの今日。 月齢13。 福島市の本日の南中時刻 22時54分。 被災地で 月は 無人の野を照らし 光と影を いやにくっきりと浮き上がらせ 鹿島の 湖と呼ぶには あまりにささやかな 塩分を含んだはずの水たまりも きっといくばくかの セシウム134と137を湛え そ…

8月16日 南相馬・鹿島・松林

同8月16日。 筆で一本、線を横に引いた海岸線。 海と陸を隔てて、黒松が境界を埋めていた、 それは、とおい昔の話ではない。 目を閉じれば、鮮明に見えるものが、 あまりに、遠い。 海岸線から離れた内陸にまで、 黒松は根ごと、運ばれていた。 いったい、こ…

8月16日 南相馬・鹿島・右田

同8月16日、海近く。 そこに何があったのか、 そこで何が起きたのか、 今さら、言うのも問うのも愚かしいことだけれど、 来るたび、問わずにはいられない。 けれど、その問いを発する一瞬前に、答えは有無を言わさず、覆い被さってくる。 結局、何の言葉も思…

8月16日 南相馬・鹿島・船

同8月16日、海近く。 夕方前、晴れ。 倒れたままの墓石。 もう一度、震度7が来るって。 どっかの予言者が○月×日にまたおっきいのが来るって言ってるらしいよ。 そんな話がまことしやかに囁かれる事も減り、時折、そう言う人に出会うと懐かしい気持ちさえする…

 8月16日。 高原、夏。

8月16日。 高原、夏。 主(あるじ)不在の田畑。 常ならぬ姿。 常は、よく手入れされ、人の動く、その田畑に、草が生う。 裾野広い稜線は、空をなだらかに映し込み、ひかりを野にたくわえる。 今日で盆が終わる。 墓地の花生けに水はなく、乾きかけた花が色…

高原の村

東北の高原の冬は、ただ、凍みる。 奥羽山脈付近で湿度を雪に変えた寒気は、冷たく乾いた空気となって、太平洋間近の高地を覆う。 積雪量がさほど多くない代わりに、雪に覆われない大地は凍てつき、人の手が入る事を拒む。 厚く凍った地面は、金属のツルハシ…

新世紀へようこそ

あれから、ずっと、言葉を探している。 頭の中で、何度も、これだと思う言葉を反芻している。 けれど、文字におとして見ると、やはり違うのだ。 だから、また、探し続ける。 私は、新しい言葉を、探し続けなくてはならない。 今、私の置かれている状況は、コ…