2014-01-01から1年間の記事一覧

引き波

あなたの皮膚はうすく、肌は白く、滑らかだった。 それが、長い病人暮らしからのものであることを知ってから知らずか、人は褒め、自分の手の荒れていることを言った。 少しまぶしそうにその言葉を聞き、あなたは「なにもしていないからね」と返した。 もし、…

それ、そら、それ、そら、それらが。 緑にさす日は、あかるく軽やかに、影と光を揺れ揺らし。 あなたが望んだものはなんだったのだろう、と、ふいに思い、その「あなた」が誰のことかわからず、困惑しながら、私は、誰だかわからないあなたのことを考えつづ…

ねえ、あの人たち、ほんとに帰れるの? 帰りの車中、年齢に比して、(けれど、彼女にはよく似合った)舌足らずの喋り方で、唐突に尋ねられ、言葉に詰まった。 その問いには、なんの意図も悪意もなく、ただ心に浮かんだ疑問をそのまままっすぐに言葉にしただ…

ねむりひめ

木の香りが漂う、真新しく、丁度の整えられた、落ち着いた雰囲気の家。 いちばん日の当たる見晴らしのよい部屋のベッドで、彼女はねむっていた。 チリひとつ落ちていない清潔な家と同じように、ベッドも彼女も清潔そのもので、脇に置かれた機器類やガーゼ等…