今日で、半年

 半年めの今日。
 月齢13。
 福島市の本日の南中時刻 22時54分。


 被災地で
 月は
 無人の野を照らし
 光と影を
 いやにくっきりと浮き上がらせ
 

 鹿島の
 湖と呼ぶには
 あまりにささやかな
 塩分を含んだはずの水たまりも
 きっといくばくかの
 セシウム134と137を湛え
 その淀みにも
 月は光を映し
 それは


 寂しいだろうか。
 悲しいだろうか。
 美しいだろうか。


 それは


 きっと
 寂しくて
 悲しくて
 美しいだろう。




 中原中也の「湖上」を思い出しながら。
 今日で、半年。


 

湖上


ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。


沖に出たらば暗いでせう、
櫂から滴垂る水の音は
昵懇しいものに聞こえませう、
――あなたの言葉の杜切れ間を。


月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われら接唇する時に
月は頭上にあるでせう。


あなたはなほも、語るでせう、
よしないことや拗言や、
洩らさず私は聴くでせう、
――けれど漕ぐ手はやめないで。


ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう、
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。