■ホタルブクロ

 それは、湿度をたっぷりと孕んだ梅雨の終わりの大気とともに、揺らいでいる。
 手を差し出して、その山並みを、二の腕で抱きしめることができたなら。
 手元の線量計は、デジタル表示の最大値を超え、点滅を繰り返した。
 ホタルブクロは、ひそやかな道標のように道ばたを照らす。
 車を停め、色を変えるその写真ばかりを撮った。
 胸に付けた積算計の数値が、音もなく、上昇する。

 ここが、そう、レッドゾーン。

 (泣いてはいけない)