2019秋旅日記 〜TERRITORIES勧告編

3日間に及ぶワークショップは、ここ数年にわたって検討されてきた放射性物質による長期汚染地域の通常核廃棄物と原子力災害後の二つの管理方針について、社会ー経済的側面を含めた勧告をまとめることを目的としている。

参加者はヨーロッパ各国で、EUの正規加盟ではない準加盟国のノルウェーなども含まれる。言語は英語だが、英語を母語とするのはイギリス人だけで、大多数の参加者は英語ネイティブではない。そのため、アメリカでの会議に比べれば、相当に聞き取りやすい。英語力も発音もさまざまで、流暢なきれいな英語を話す人から、かなり訛りのある英語を話す人もいる。私がもっとも英語力がない参加者なのは間違いないだろうけれど、日本人の発音が取り立ててわかりにくいということもないので、あまり気にする必要はないということはわかる。

EUというフレームで動いてはいるものの、実施するのは各国で、各国それぞれの政府があり制度があり、社会状況も大きく異なる。議論の過程で、「わが国ではこうなので」と違う経験が出てきて、それぞれの立ち位置や意見が自然と相対化されることになる。とはいっても、あくまでヨーロッパ文脈でではあるけれど、アメリカの会議で感じた、アメリカ国内にしか関心が向いていない様子とは、また大きく異なる。

ヨーロッパというある程度文化や歴史を共有している違う国々でこうした議論を交わせるのは、大きな利点だろうと感じる。議論のプロセスを共有しているので、なにか起きたときにもその過程でどんな課題が出ていたかを振り返って調整することができるだろうと思う。日本が外国の知見を取り入れる際に、こうした議論のプロセスを経ることなく結果だけを持っていくことが普通なので、結果として木に竹を接ぐようなチグハグな制度になるのだとも思う。あいにくと日本は、極東アジアで近隣国とこうした議論を行うことはおそらく不可能だろうので、ヨーロッパでの議論になるべく参加させてもらった方がいいのではないかと思う。アメリカは上に書いたように、もっぱら自国の課題のみに関心が向いているので、日本が議論に参加できる余地はほぼないと思う。福島事故で、ヨーロッパの関心がわずかでも日本に向けられたのは議論に参加するための貴重なチャンスだと思うのだが。