2019秋旅日記 〜ワークショップ編

現在まとめられているドキュメントを元に、適当に(「適切に」ではなく、「行き当たりばったり、たまたま」という意味で)座っている各テーブルごとにディスカッションをしてそれぞれのテーブルで意見を述べていく形式のワークショップ。

英語力があるとかないとか言っている場合ではなく、否が応でもしゃべらざるを得ない状況に置かれる。同じテーブルにたまたまASN(フランスの原子力規制の当局)のコミッショナー(日本の原子力規制委員みたいなものとのこと)が座っていて、じっくり話すことができた。とは言っても、彼がASNのコミッショナーになったのは今年になってからで、それまでのIRSNの時にダイアログに何度か来ていて、私のことも知っていたそうだった。フランスのCLIについて話を聞くことができ、非常に興味深かった。誰にでも門戸は開かれていて、原子力技術者や規制当局、電力公社の人と直接話もできるけれど、参加する一般住民は主としてリタイア組。現役世代は、平日日中は働いているし、CLIの会議に参加する時間を見つめるのが難しい。これは日本も同じ。

別の人から聞いた話では、フランスの退職時期は職業や組織によってバラバラのようだけれど、70歳以降は働くことが法律で禁じられているらしい。その後は年金や蓄えで暮らすことになるけれど、年金は公務員の場合は現役時代の最後の時期の80%と相当恵まれているけれど、民間だと一番高い時期の何年間の平均額の50%程度と差が大きく、貧困層も多く、月に1,000ユーロ以下の年金のみで暮らしていかなくてはならない人たちも少なからずいるとのこと。フランスのように世代間人口バランスがとれているところでも年金問題は簡単ではないよう。

実経験に基づく言葉は説得力が違うので、ここでの議論をリードするのも、チェルノブイリと福島での経験者になる。とは言っても、大半の参加者は未経験者なので、ここでまとめられた提言がどれほど実際に使えるのかはわからない。どちらかと言うと、こうして議論を重ねておくことによって、なにかが起きたときのある程度の方向性に対するコンセンサスと、実装にあたって必要な事柄を調べるためのインデックス(手がかり)が作っておけることのほうが重要なのかもしれない。これはできあがった成果物からは見えてこないけれど、緊急時にとっさに聞きたい情報を教えてくれる相談先がすぐに思い浮かぶかどうかは、決定的に重要になる。そうしてネットワークを作り、維持しておけることは目に見えないけれど大切なことだと感じた。