失当見識

わたしたちは歩く
ひと気のない町並みを
破れたブルーシートに飾られた屋根のあいだを
背丈を超えた雑草生い茂る田畑の畦をかきわけ
はなうたまじりに
失当見識のさまよい人のように
いやに明るいあの旋律を口ずさみながら
わたしたちは歩く
かつての風景を発掘しながら
澱のようにたまった忘却をかきわけながら
あの頃の気配を探しながら
わたしたちは歩く
行けば行くほど
家屋は色を失い、
草木は濃く、
記憶は薄れ、
それでも
はなうたまじりに
いやに明るいあの旋律をくちずさみながら

あの日見たあの花はあなたが植えた
わたしはあなたが誰かは知らないけれど
あなたが植えたことは知っている、知っていた
いまもあの花は咲いている
失当見識のさまよい人を迎えるために