天に近い頂から、色に染まるこの季節に、あなた方に人々の声を届けたいと思った。
 朽ち果てていく家屋の香りとともに、置き去りにされ放置されたままのあの日のままの景色とともに、刻銘にきざまれたあなた方が引いた境界線の跡とともに。
 じきに忘れるから、あなた方は、きっと、忘れてしまうから。
 だから、忘れさせないように、記憶に刻みつけてもらうために。


 道をゆく。
 平坦な道をゆく。
 どこにも、ゲートなど存在しない、道をゆく。
 道は、つながっている。
 この先には、街がある。
 人々の暮らしている集落がある。
 鄙びた、うつくしい村がある。
 あの場所まで、つながっている。
 どこまでも、どこまでも、つながっている。
 そんな夢を見る。
 今も見る。