2019-01-01から1年間の記事一覧

ほんとうのこと

近ごろの「ぬ」は強情だ。 仕事を終えて話しかけても、こちらの言うことを最後まで聞かない。 途中、必ずこう言って遮る。 ほんとうのことをおはなししようよ、ほんとうのこと。 「ほんとうのことってなぁに?」 そう訊ねると、「ぬ」は目に力を込めて考える…

やまゆりが咲くころ

ヤマユリが満開です。おひさまがたくさんあたる山の斜面にポン、ポンと白い花を咲かせています。いっぱいのヤマユリを咲かせたのは、るーとらたちです。夜のうちに、両腕いっぱいにつぼみのヤマユリを抱えたるーとらたちが、斜面にヤマユリをさしていきます…

5人のきょうだい

るーとらは5人きょうだいです。 一番上がびっくりるーとらで、 一番下はこわがりるーとら、 残りの3人は楽しいるーとらです。 るーとらたち、おうちって見たことあるかい? いいえ、ありません。 だって、るーとらたちはいつも地面に横になって眠るのです…

ぬとるーとら

5人のるーとらたちは、大きな木の根元で小さくかたまってふるえていました。 誰が、るーとらたちをそこへ置いていったのかは、わかりません。 るーとらたちは、小さすぎて自分で食べ物を探しにゆくことができませんでした。 木の葉に集まるしずくを5人でわ…

るーとらたちの朝

るーとらたちは朝の森を駆けてゆくよ。ぱたぱたぱたぱた……夕べは風が強かったので、地面はまだわかい落ち葉や木の実で埋めつくされている。ときには堅い木の枝も道に横になっていて、るーとらたちはすってんころりん転んでしまう。あはははは……どこかでだれ…

本の感想『世界の核被災地で起きたこと』

世界の核被災地で起きたことwww.amazon.co.jp 2,700円(2019月06月01日 09:22時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する 環境ジャーナリストである著者が、世界各地の核被災地に実際に足を運び、取材して書かれた本書では、核開発の歴史、その経緯で起きた…

安東量子著『海を撃つ 福島・広島・ベラルーシにて』(みすず書房)

2019年2月、福島第一原発事故の後の経験をまとめたエッセイを出版しました。※論文や発表などについては、researchermap にまとめました。https://researchmap.jp/Ryoko_ANDO私は忘れまい。今日見た景色を、聞いた話を、忘却の向こう側へ押しやられようとして…

滂沱の雨が降る

狭く短い隧道をくぐってすぐ、そのまま見過ごしてしまいそうな細い山道へ右折する。上り坂の両脇には杉林が天を指す。冬期は日が差さず、路面の凍結が消えることはないだろう暗く狭い道は、あらかじめ知らなければ、この先に人が住んでいるとさえ思わないか…

滂沱の雨が降る

狭く短い隧道をくぐってすぐ、そのまま見過ごしてしまいそうな細い山道へ右折する。上り坂の両脇には杉林が天を指す。冬期は日が差さず、路面の凍結が消えることはないだろう暗く狭い道は、あらかじめ知らなければ、この先に人が住んでいるとさえ思わないか…